目を覚ますと、なんだか部屋の外が騒がしかった。
何かあったのかと思ったけど、まだ自分は起きたてでさすがにこの姿で誰かの前に出るのは恥ずかしい。
とりあえず、手早く用意を済ませてから音の元へ向かった。
「――るいです、Jr.さん!」
「ず、ずるいって、あのな、モモ……」
ドアの向こうから聞こえてくる二人分の声。モモちゃんとJr.君のようだ。
珍しい事にモモちゃんがJr.君に対して声を荒げていて、そんなモモちゃんにJr.君は戸惑っているような、困っているような、そんな声。
この二人がこんな風に喧嘩(と、言うのだろうか、これも)をしているのは本当に珍しい。
モモちゃんは滅多に声を荒げたりしない子だし、Jr.君だってモモちゃんの事はとても大事にしてるみたいだし、とにかく仲が良くって喧嘩なんてまずないと思ってた。
「とにかく、Jr.さんは帰ってください!」
「な、なんでだよ!」
「昨日も、一昨日もJr.さんだったじゃないですか! だから今日はモモが――」
「……二人とも、どうしたの?」
「シオン!」
「シオンさん!」
ドアを開けると、二人が弾かれたようにこっちを見る。
そして、今まで言い合いをしていたのが嘘のように、息ぴったりに同時に言ったのだ。
「「おはよう(ございます)! シオン(さん)!」」
「お、おはよう。モモちゃん、Jr.君」
挨拶を返すと、打って変わってモモちゃんの機嫌が良くなった。にこにこといつも通りの笑顔になっている。
でも、反対にJr.君の機嫌が悪くなったような気がした。拗ねたように唇を尖らせて、ムスッとしているし。
……本当に、どうしたのかしら?
「ねぇ、何をそんなに言い合ってたの?」
「一番のおはようは、大事なんです」
今日はモモの名前が先に出てきたので、良いです。うふふと笑いながらモモちゃんが言う。
――さっぱり、分からなかった。